「自殺について」ショーペンハウアー

ショーペンハウアーの晩年の著作「パレルガ・ウント・パラリポーメナ」の中の一部、その中の五篇である。
・我々の真実の本質は死によって破壊せられえないものであるという教説によせて
・現存在の虚無性に関する教説に寄せる補遺
・世界の苦悩に関する教説に寄せる補遺
・自殺について
・生きんとする意志の肯定と否定に関する教説によせる補遺

いずれも死に対するとらえ方を深く考察して展開されていく。人間は結局死んでしまう。存在とはなんとむなしくはかないのであろうか。かつてあったところのものは、もはや無い。現にあるもの一切は次の瞬間にはかつてあったものとなる。我々は幾万年を通じて、未だかつてなかったが、突如としてあらわれ、再び同じように永劫に無くなってしまう。では我々の人生とは一体なんであるか。
欲望は限りなく続き、人間の傲慢は膨れ上がる。人生の苦悩はいくら取り除いても、あらたな苦悩がむっくりと頭をあげ、際限なくあらわれる。
ショーペンハウアーは、人生はどこまでも我々に施される厳格な躾である語る。人生の真相は悲劇と同じ性質のものだ。

では人生に対する我々の目標とせんとするものは何であろうか。人間の到達しうる最高の人生とは万人に何らかの意味で役立つようなことの為に異常な困難と戦い、そして最後に勝利をおさめはするが報いられることのないような事である。
意志はやがて涅槃のうちに消滅するが、追憶は後世にとどまる。

裏切られた希望、挫させられた目論見、それと気づいたときにはもう遅すぎる過ちの連続に他ならないこと。

本作の最後にゲーテの詩が引用されている。

やがて老齢と経験とが、手をたずさえて、
彼を死へと導いていく。
そのとき彼は覚えられるのだ。
あのように長いあのように苦しかった精神であったのに、
自分の生涯はみんな間違っていたのだ、と。
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